ベッド上で行うエクササイズ
フォームローラーエクササイズを、治療の場面でどのように活用できるのかについて、花田学園(鍼灸マッサージ・柔道整復の専門学校、東京都渋谷区)および(財)東洋医学研究所付属クリニックに勤務され、書籍『フォームローラーエクササイズ』の監修も担当した溝口秀雪氏に話をうかがいました。

治療で用いるフォームローラー
溝口氏は以前よりバスタオルなどを筒状に巻いて、背中の下に敷くといったような運動指導を行っていたそうです。
数年前、日暮清氏(横浜F・マリノスヘッドトレーナー)より、フォームローラー(日本では商標の関係でストレッチポールと呼ばれる)を紹介され、これを臨床場面で少しずつ用いるようになりました。
フォームローラーエクササイズは、工夫次第で様々なバリエーションが考えられますが、治療の現場で実際に活用できると思われるエクササイズをいくつか紹介します。

治療に用いる利点
フォームローラーを治療に用いる場合、次のような利点が挙げられます。
1.安全性が高い
2.難しくない
3.場所を問わない
4.1人でもできる

これらの特長を活かして、それぞれの必要に応じたプログラムを考案・実施して頂きたいと思います。
なお、エクササイズの選択にあたっては、書籍『フォームローラーエクササイズ』(ブックハウスHD)や日本コアコンディショニング協会の教本・ビデオ『背骨のストレッチ』を参考にされるとよいでしょう。

治療院で行うエクササイズ
患者に対して、「関節の曲げ伸ばしを繰り返しなさい」「筋肉を伸ばしなさい」と単に患部を動かすように指示しても、面白味がなく、継続させることは難しいようです。
このような道具を使うことで、リハビリテーションの必要性を意識させるきっかけとなり、機能回復までモチベーションを継続させることが可能になります。
治療の現場では、物理療法を行ったあとの自動介助運動プログラムとしても効果的です。

フォームローラーエクササイズをベッド上で行う場合、床よりも四肢を低い位置に伸ばすことが可能なので、より大きな可動域を得ることができます。
床のスペースを確保するのが難しい治療院の場合、ベッド上で、前号で紹介されたベーシックセブンも実施できます。
なお、ゆっくりとした動作で行うことが、安全性を保ち、快適なエクササイズにする上で大切になります。
ベッド上で円筒状のフルローラーを使うと、ベッドの高さに加えてローラーの分だけ高くなり、不安定になるために恐怖感が増すことがあるので、初心者や中高年にはハーフローラーまたはソフトタイプのローラーを用いた方法から導入するとよいでしょう。

安全面には十分気をつけて、フォームローラーエクササイズの指導を行って頂きたいと思います。

(1)体幹のエクササイズ(導入時)
動きに慣れてもらうよう、導入時にはタオルを丸めて、脊柱をストレッチします。


体幹のエクササイズ(ローラー使用)

慣れてきたら、ハーフローラーまたはソフトタイプのローラーを用いて、上記と同様のストレッチを行います。

(2)足関節のリハビリテーション
ベッドに腰掛けて、1本のハーフローラーの上に両足をのせます。
健側の力を使って、患側の足関節可動域を広げるように底屈・背屈をゆっくりと行います。
同じローラーに両足をのせているので、制限されている側の可動範囲で動かすことができます。
患側には、痛みの出ない範囲で適度に受動的なストレッチがかかるようにします。


同じ姿勢で、つま先の向きをやや内側や外側に向けて底屈・背屈をゆっくりと行います。
ストレッチの方向を変化させて、両足をそろえた場合とは異なる刺激を入れることができます。


同じ姿勢で、左右それぞれ別のハーフローラーを用います。
患側でもアクティブなストレッチをかけることができます。


ハーフローラーの方向を変えて、内反・外反運動も行うことができます。

(3)膝の屈曲・伸展
フルローラーの上に足をのせ、ゆっくりと写真のように前方や後方へ転がすことによって、無理なく膝の屈曲・伸展エクササイズができます(『フォームローラーエクササイズ』p.122参照)。

(4)安定性トレーニング
体幹の安定性を増すために、上記の足首と膝のエクササイズ中、ローラーの上に腰掛けて実施することもできます。
写真ではハーフローラーを使用しています。
慣れていない患者、中高齢者には危険が伴うため、十分に慣れてから用いるとよいでしょう。
若い患者やスポーツ選手に対してはハーフローラーから始め、慣れてきたらフルローラーを用います(同書p.120参照)。

(5)背筋や肩甲間部のセルフマッサージ
ローラーを縦にした状態で壁と背中で挟むようにします。
背骨の両脇の盛り上がった部分にあたるようにし、身体を押し付けながらローラーを左右に転がします。
肩甲骨間の筋肉のこりを感じるとき、電車の手すりや柱を使って行っている方もいると思いますが、同じ要領です。
手軽にマッサージ効果が得られます。

(6)立位での肩甲間部のエクササイズ
ローラーを縦にした状態で壁と背中で挟むようにします。
両手を重ねるようにして、腰のあたりの高さでローラーに手をおきます。
胸を張るように、手を後に押し、ローラーから背中を離します(同書p.90参照)。

(7)ベーシックセブン(基本プログラム参照
ベッド上でハーフローラーを用いてベーシックセブンの1つ「床みがき運動」をしているところ。
ベッド上で行う場合は、ハーフローラーやソフトタイプのローラーのほうが、ベッドから転落の危険性や患者の恐怖心は少なくなります。
撮影協力:(有)リニアート
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